愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題!
その5.≪「日舞って、ナニ?」ってナ〜ニ?≫
この頃よく、「日本舞踊って、何ですか」とか、「日本舞踊について
色々と知りたいので、教えて下さい」といった書き込みが、目に付き
始めました。僕のHPではなく、他の舞踊家の方の「掲示板」に、そ
ういった「書き込み」が多いようです。今まで日舞に関心のなかった
方たちが、日本舞踊家のHPにアクセスした事がキッカケで、日舞に
興味を持って頂けるのは、本当に嬉しい事です。 。
しかし、それらの「書き込み」に、簡潔にして要を得た「返信」を書
いている舞踊家はいないように思います。その代わり、という訳でも
ないでしょうが、「日本舞踊とは?」とか、「日本舞踊の歴史」とか
「当流の由来」とかいったページを開いている方達が多いようです。
それらのページを読んで見ると、成る程詳しく丁寧に書かれたものが
多く、中には、「よくぞこれだけ調べ上げたものだナァ!」と、感心
させられるものも少なくありません。本当に勉強になります。 。
だから、それらの力作に、ケチをつけるつもりは、毛頭ありません。
ただ心配なのは、というよりモドカシイのは、いくらそういった資料
を読んでみても、「日本舞踊」が解った事にはならないという点なの
です。この頃テレビで流行っている料理番組にしてもそうですが、レ
シピを教わって実際に夕食のおかずとして作れるような物ならいざ知
らず、到底味を想像する事さえ出来ないような番組が増えています。
家内は、「これだけの特選素材を使って、一流の料理人が作るのだか
ら、ドッチにしてもまずい訳がない。でも、さんざん待たされジラさ
れた揚句、結局視聴者は何にも食べられないんだから、こんな番組、
大嫌い!」といって、チャンネルを変えてしまいます。何でもそうで
すが、どんなに懇切丁寧な説明を受けても、直接見たり聞いたり触っ
たり味わったりしない限り、本当の所は何も解らないのです。 。
何でも前もって勉強しておく事は、決して悪い事ではないのですが、
なまじ知識が先行して、先入観や固定観念を持って事に望むと、返っ
て誤った受け取り方をしてみたり、想像していた物と現実とのギャッ
プに悩まされたりする事もあります。外国人の方が、何の知識も持た
ないで歌舞伎座に来られて、英語のイヤホーンガイドと英語の「筋書
き」だけを頼りに歌舞伎をご覧になっても、充分感動して、満足して
お帰りになります。芸術は何でも、知識として理解する事よりも、直
接触れて、理屈抜きに感動する事の方が、大切なのではないでしょう
か。 。
僕は小学校に入るか入らないかの頃から、ミュージカル映画を観てい
ましたし、日本舞踊も歌舞伎も大好きでした。勿論何も理解していた
訳ではありませんし、映画の字幕だって、平仮名ぐらいしか読めませ
んでした。それでもワクワクするほど好きでしたし、好きだったから
こそ、だんだん深く理解できるようになりました。ポップスの好きな
僕は、バックストリート・ボーイズやリッキー・マーチンの曲をよく
聴きますが、残念ながら英語に弱いので、歌詞に感動して聞いてる訳
ではありません。でも、「イイ曲だナァ!」と思ったらすぐにCDを
買って、まず聴きながらユックリと歌詞(日本語訳の)を読みます。
だから、出来れば「日本舞踊って、なに?」と訊く前に、まず「日本
舞踊」を観て頂きたいのです。ご覧になった後で、理解できなかった
部分や疑問に思った点について質問して下さるのなら、喜んでいくら
でもお答えしたいと思います。そして残念ながら、「ちっとも面白く
なかった。何の感動も受けなかった」という方は、無理をしてまた観
て下さる必要はありません。日本舞踊以外に、もっと貴方の魂を揺さ
ぶってくれるようなものを、探して下さい。人それぞれ、好みという
ものがあって、どんなに説明されても、また理屈では素晴らしい物だ
という事が理解できても、ピンと来ないものはしょうがないのです。
そして僕達舞踊関係者は、たった一度観ただけで、「日本舞踊」を好
きになったり嫌いになったりする方達が、たくさんいらっしゃるのだ
と言う事を、肝に銘じて舞台を勤めなければならないと、いつも自分
に言い聞かせています。 。
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